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執筆者の写真ShinFukuda

線維筋痛症 ~痛みと向き合い、そしてつき合う~


「痛み」というのは極めて主観的なものです。

患者さんが痛いと言えば、それは誰が何と言おうと「痛い」のです。


痛みを訴える患者さんに対していろいろ検査して異常がないことがわかり、医者に「大丈夫ですよ!」と言われても、「いやいやだから痛いんだって!」という話ですね。


しばしば、我々は痛みという症状を軽視しがちです。

それは、客観的によくわからないからです。そして、痛くても「死にはしない」からです。

自分が痛いときはすぐに鎮痛剤を飲むくせに、他人が痛いと言っているときには死にはしないから大丈夫、と思ってしまう節があります。


同じような痛み(例えば骨折したとき)でも、人によって程度が異なるのも痛みの特徴です。

痛みに強いとか弱いとかいうのがこれですね。

さらには同じ人でも時間帯や気分、場面によっても痛みの強さが違ってきます。

足を骨折しながらも何事もなかったかのように全力でプレーし続けたサッカー選手もいましたね。



さて、そのただひたすら痛いけど原因をどれだけ調べても不明という病気の代表格が「線維筋痛症」です。


日本ではなんと 200万人もいると言われているそうですが、「原因不明の痛みを訴える人」を全部あわせたらそれくらいいるのでしょう。

この疾患はその概念すら否定的な医師もいるくらいで、確立されているものではないと考えられます。

ネットを検索するといい加減なことばかり書かれていたりそれぞれの体験記が散見されたりするのも、この疾患概念が単一のものではないことの裏返しだと思います。



そしてこの病気の一番の問題は、どこの診療科にかかったらいいのかが分からないところです。


あちこち痛いからとりあえず整形外科に行ってみたり、リウマチじゃないかと思ってリウマチ科を受診してみたり、気分的にも落ち込んでいるので精神科で相談してみたり …。


結局は線維筋痛症をしっかりとみてくれる医者のところにたどり着けないと、治療のスタートがきれません。

それは内科医かもしれないし、整形外科医かもしれないし、精神科医かもしれません。


線維筋痛症の専門家などほとんどいませんので、大事なことは「その医者が自分の痛みとしっかり向き合ってくれるかどうか」です。

正直なところ、このような原因も分からず治療方法も確立していない病気をもった患者さんのことは、なるべく手放したいと考える医者が大半でしょう。


運良くちゃんと見てくれる医者を見つけたときに、気を付けなければいけないことがあります。


それは、「完治を目指さない」ということです。


では線維筋痛症のゴールはどこか。

それは、痛みと上手に付き合っていくことだと思っています。

痛みをゼロにすることをゴールにした瞬間に、敗北が確定します。

痛みを拒絶し続けること、それは常時痛みと対峙している状態であり、非常につらいのです。

逆に、痛みも自分の一部であり、それを含めて自分を受け入れていこうという気持ちに切り替わることができれば予後も変わってきますし、結果的に痛みをほぼ感じないレベルにまでもっていくことも不可能ではありません。


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