ゼルヤンツ(一般名トファシチニブ)=JAK阻害薬
数ある抗リウマチ薬の中でも最も新しい作用をもつ薬です。
2013年に発売され、その薬の特殊性からゼルヤンツを使用する患者さんひとりひとりに詳細な調査報告をすることが義務となっておりました。
数ヶ月に渡って何ページもの患者情報を細かく報告しなければならない、ちょっとめんどくさい(笑)薬でした。現在では数千例の報告があつまり、一旦全例調査は終わっております。
さて関節リウマチという病気ですが、日本には80万人ほどいると言われています。
程度の軽い人から重い人まで、様々なのですが、第1段階の治療で炎症が治らないときに「生物学的製剤(=バイオ製剤)」というものが使われます。
バイオは、注射薬です。点滴で入れたり、皮下注射で投与したりします。
患者さんによっては注射と聞いただけで拒否反応を示す方も多くおられますが、なんでわざわざ注射なのでしょうか。
それは、このバイオ製剤、分子が大きいからなのです。
分子が大きいために吸収の効率が非常に悪く、作用すべきところまで届きません。
仮に注射薬が嫌だからってゴックンと飲んだとしても、害もなければ効果も全く発現しません。
ただ、その分非常に炎症を抑える効果が強力です。
リウマチは炎症を放って置くと関節変形してきてしまうので、やはりしっかりと治療をして炎症をコントロールしてあげるという意味ではとても重要な薬です。
話を戻してゼルヤンツというお薬、その効果は最強レベルのバイオ製剤と同等ですが、なんと飲み薬です。分子量が小さいのでしっかりと内服後に吸収され、細胞内まで入り込んで作用します。
リウマチの原因となる炎症性サイトカインが細胞にくっついても、細胞内のJAKというところを阻害することでシグナル伝達をブロックし、炎症自体を起こらなくするものです(難しいですね。分からなくていいです)。
とりあえず、よく効くお薬です。
バイオ製剤にしろゼルヤンツにしろ、問題点があります。
①感染症と、②金額です。
リウマチというのは異常な免疫反応で生じる病気です。異常な免疫反応を抑えようとする結果、どうしても正常な免疫反応も抑えてしまいます。
正常な免疫反応を抑えるとどうなるか。
からだに入ってきたウイルスとか細菌などの病原体をやっつけるために出動する免疫が弱まってしまうのです。
したがって、薬を使っている場合とそうでない場合では、感染症の発症頻度が若干増加するようです。
ゼルヤンツの場合は「帯状疱疹」にわりとかかりやすくなってしまうのが特徴です。
それから金額。
薬代だけで、3割負担でも月に3万から5万円くらいかかります。
ゼルヤンツは8mm程度の小さな錠剤ですが、1錠で2600円もします!落としてなくしたら、数日後悔するレベルです。
1日に2錠使うので、1日5200円。1ヶ月で15万円ですね。3割でも5万円だから、躊躇しないひとはあまりいないでしょう。1日あたりでいうと、1600円弱。
これを高いとみるか安いとみるか。
いずれにしても、関節リウマチという病気、痛いだけならばある程度我慢するかっていう気持ちになるかもしれませんが、骨が壊れてきたり関節が動かなくなってしまったりするリスクがあります。
金銭的な部分はちょっとがんばってもらって、感染症に留意しながらにうまく使ってあげるのがいいなと思っています。
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